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カルタヘナでのホームステイで考えたこと(コロンビア)

コロンビアのカリブ海沿岸にカルタヘナと呼ばれる美しい町がある。僕はこのカルタヘナでホームステイをしたことがある。カルタヘナは主に半島のように海に突き出た場所に高級ホテルが建ち並ぶ新市街と、ムリージョと呼ばれる城壁に囲まれ植民地時代の建物が数多く残る旧市街からなっている。

私のホームステイ先は旧市街にあり、家の真ん中にパティオと呼ばれる中庭がある典型的なコロニアル風の建物だった。カルタヘナは大学の町のようで、学生の姿を多く見かける。そのためか私のホームステイ先も、僕のほかに数名のコロンビア人学生が下宿しており、ホームステイと言うよりは学生寮に泊めてもらっていたと言ったほうがよいかもしれない。



ちなみに通りを隔てた向かい側には女子学生寮があり、カルタヘナ近郊の町から出てきた多くの女子学生が下宿生活をしていた。女子寮と言っても日本の女子寮のような閉鎖的な雰囲気はなく、私が勝手に出入りできるくらいきわめて開放的なものだった。

さて話を私のホームステイ先に戻すが、オーナーはアナマリアと言う女性でアナマリアの2人の妹であるベアトリスとリンダ、それにマルタという女性が手伝いをしていた。ラテン系の人間は概して陽気であるが、アナマリアとベアトリスにいたっては陽気を通り越しており、そのハイテンションぶりには全くついて行けなかった。

アナマリアはことあるごとに大声で歌を歌っているか踊っており、またベアトリスの笑い声はまるでニワトリの鳴き声ようにで、カルタヘナの町中に響くかのごとく迫力があった。リンダとマルタも陽気には違いないが、あまりにもアナマリアとベアトリスが突出しているため、どちらかと言うと地味な女性に思えた。まあそれがよいバランスになっているようだ。

本当にあまりにも陽気な家にお世話になることができて毎日が楽しく、ついついカルタヘナの町に長居してしまうことになってしまった。僕は毎日別にこれといった予定があるわけでもないのだが、町を散歩したり家でぼーっと体を休めているだけでどんどん日が過ぎていった。実に贅沢な時間の使い方である。しかし僕にとってこのなんでもない、一見無駄な時間の浪費とえる瞬間が、実は大変貴重に感じた。


カルタヘナの旧市街

ホームステイ先 パティオ(中庭)を取り囲むように
家が 建てられている。中央の女性はリンダ。

アナマリアとベアトリスは他の仕事を持っており、朝食を済ませると仕事に出かける。しかし昼の12時前には再び家に戻り昼食を作ってみんなで食べ、その後、世間話・歌・ダンスをしてだいたい午後2時か3時時くらいまで家にいる。そして再び仕事に出かけ、午後6時頃には帰ってくる。

いわゆるシエスタと呼ばれる長い昼休みの習慣である。サッカーのコロンビア代表の試合があるときはもっとすごいことになる。当然仕事はサッカーの試合開始にあわせて終了する。そしてキックオフの1時間くらい前から帰宅してテレビを見ようとする人々の車で道路が混み始め、大渋滞になる。中には無謀な運転をする人もおり交通事故を起こすが、警察に電話をかけても当然誰も出ない。仕方がない、警察官も家路を急いでいるのだ。

何か憎めない出来事が次々と起こる。この程度のことは許される社会なのかもしれない。そしていざ試合が始まると、カルタヘナの通りという通りはまるでゴーストタウンのように人出がまばらになり、主要道路もガラガラとなる。みんな一家に一台あるテレビを囲んで、サッカーを観戦するのである。僕のホームステイ先の向かい側にある女子学生寮でも、女子学生たちが1階にあるテレビを囲んでみんなで見ていた。何かほのぼのとした光景で、昔の日本を思い出してしまう。そしてコロンビア代表チームがゴールをあげると、そこらじゅうの家々から歓声が上がり、通りにこだまするのである。


ホームステイ先にて
写真を撮るといったら、 みんな集まってきた。


ホームステイ先の向かいにある女子学生の下宿にて
さすがにみんな陽気で、大変な騒ぎになってしまった。
ここの女子学生は、みなカルタヘナ郊外の出身だった。


どうしても自分の生活とコロンビア人の生活を比較してしまうのだが、仕事に追われる毎日を送っていると笑うことすら忘れてしまっている。あまり気にしていないが、2・3日まったく笑わないこともよくあるのではないかと思う。気持ちにゆとりがないのだろう。僕と同じように急き立てられるような毎日を送っている方も多いと思う。

そんな僕たち日本人をコロンビアの人たちは「お金持ちで何でも買えて、旅行にも行けていいね」と羨ましがっている。確かにそうかもしれない。これはコロンビアの人たちに対して大変失礼な言い方になるかもしれないが、僕から言わせるとそんな楽しい毎日を送っていて、暮らしてゆける彼女たちを羨ましく感じでしまうのである。

結局のところ僕を含めた多くの日本人は自分のゆとりや気持ちの余裕を売って(犠牲にして)、お金をもらっているにすぎないのではないか。それでいてコロンビアを含め多くの外国の人々から羨望の目で見られていることの、なんて妙でいやな気分だろうか。それがいやなら仕事をやめて違うことをすればよいのだが、最近ではそれをする勇気すらうせてしまっていることが悲しい。


「百年の孤独(ガルシア・マルケス著)」について

コロンビアの国民的作家と言えば1982年にノーベル文学賞を受賞したガルシア・マルケスをあげることができる。彼の出身はカルタヘナに程近いアラカタカである。僕はカルタヘナ滞在中にアラカタカへ行こうと思っていたが、いつでも行けるという思いからついに行きそびれてしまった。

彼の代表作に「百年の孤独」という小説がある。僕はこれから中南米を旅行しようと思っている人にぜひとも読んでもらいたい小説だと思っている。この小説は中南米を手っ取り早く理解するうえで教科書のようなもので、これを読むのと読まないのとでは中南米に対する理解度にかなりの差が出ると思うからである。この本が南米諸国で発売になったとき、「ホットドックのよう飛ぶようにに売れた」といわれている。なぜこの小説が中南米の人々にこんなに支持されたのか。読者はこの小説を2度3度と読み重ねていくと、この疑問から開放されることになる。

小説の中身をここでこと細かく書いてしまうと、これから読む人の楽しみを奪うことになってしてしまうので、ここでは簡単に紹介したいと思う。カリブ海沿岸にある架空の村マコンド。もともとはたまにやってくるサーカス団の公演くらいしか娯楽がないような村に多国籍企業であるバナナ会社が進出してくる。やがて村は繁栄して町になり人々の暮らしもよくなっていくが、当然その弊害も表面化してくる。

労働者を虐殺する軍隊、政府への反乱を重ねる大佐、やがて混乱に陥ったマコンドはこの世界から消滅してしまう。このマコンドの栄枯盛衰をプエンディーア一族の目を通して、ダイナミックに描ききっている。簡単に書いてしまうとこういうことなのだが、文章は実に難解な部分も多く、また非現実的・超自然的でありえない出来事がたんたんと起こるため、初めてこの小説を読み終えた人の中には単なる歴史物語しか感じない人もいるだろう。実はこの小説の中にはたくさんのトリックがかくされているのである。

実はガルシア・マルケスは多くの挿話や寓話をこの小説の中に組み込み、コロンビアの歴史(他の中南米のほとんどの国々の歴史にもあてはまってしまう)をさまざまな形で比喩・暗喩しているのである。「魔術的リアリズム」と呼ばれる彼のこの手法は、よくインドのサルマン・ラシュディ(代表作:「悪魔の詩」、「真夜中の子供達」、「ジャガーの微笑」など)の手法と比較される。

つまり「バナナ会社=ユナイテドフルーツ社 外国からの搾取の象徴」、「キリスト教=土着信仰を排除する、外から入ってきた宗教」、「労働者への抑圧=アメリカ帝国主義の傀儡政権が行ってきたこと」、「大佐の反乱=反政府ゲリラ」といった感じで読み替えていくと、この小説のスケールの大きなことに気づいてしまう。

つまりここに登場する架空都市マコンドは、暗に悩めるコロンビア又は他の中南米の国自体をさしているのである。幸いコロンビアはまだこの世から消滅していないが、ガルシア・マルケスはコロンビアの行く末までも予言して、この小説を通じてそうならないように軌道修正を促しているのである。こうして読みすすめてゆくと、小説に登場するさまざまな非現実的・超自然的な出来事が、実は現実のもののように思えてくる。これらの現象はガルシア・マルケス自身又は他の中南米の人々が、かって実際に日常生活の中で体験した出来事の一部なのかもしれない。

 さて冒頭の「なぜこの小説が中南米の人々にこんなに支持されたのか」という疑問であるが、おそらくこの小説の登場人物に自分や自分の周りにいる人々を重ね合わせたかったのだと思う。そして社会の不公平や不条理に翻弄されている自分たちの代弁者として、登場人物を捉えていたのだろうと思う。

 

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