僕とビンギは翌朝6時にホテルを出発した。ブリサからパラアまでの距離は約33キロで、ジャングルを貫いている一本道となっていた。当然舗装などされておらず、さらにアップダウンが多いかなりの悪路である。下りはよいが、上りは自転車を降りて歩かなければならなかった。
周りはまだ暗いが、日中とは違って涼しく風も爽やかだった。僕たちは何度か運転を交代しながら、一路パラアを目指した。ジャングルの一本道は行けども行けども同じ風景の繰り返しで、変化に乏しかった。
周りが明るくなり始めた頃、突然僕の背中に「チクッ」という痛みが走った。ツエツエバエである。ツエツエバエの群れが襲ってきたのだった。ツエツエバエは恐ろしい眠り病を媒介する吸血性のハエである。
僕たちは一目散に逃げたが、ツエツエバエもしつこくどこまでも追いかけてきた。しかしこんなにしつこいとは思わなかった。
普通ハエの仲間は人間を見たら近寄ってこないものだが、ツエツエバエは貪欲にも追いかけてくる。何とかツエツエバエの襲撃を振り切り、僕たちは再びパラアに向けて無心に走り続けた。
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